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〜楽譜集〜

歌は心で歌う

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    名手と言われる人の演奏を聴くと度々不思議な感覚に陥ります。
    奏者はそこに居て楽器を演奏しているのに、音の出所がわからないのです。
    楽器を演奏しているのだから、楽器から音が出ているのは当たり前なのでしょうが、どうにも目で見ているところと違うところから聴こえてくるようで、耳は響きのありかを終始さぐりながら、しかし演奏に聴き入りながらあっという間に時間が過ぎてしまいます。決して大きい音ではありませんが、響きが会場全体を包んでいます。

    先日聴きに行ったオーケストラのコンサートでは、金管の音が座っている背後から響いてきました。
    またある時は、コンサートマスターは指揮者の左側、ステージ中央左に席がありますが、響きが右後ろから伝わってきたこともありました。

    名演奏は「まさに天井から音が降ってくるような」と表現されるとおり、前方からの音だけではなく縦横無尽な響きに満たされる瞬間の連続です。

    今のコンサートホールは、音響学で緻密に計算された設計になっていて、音の反射が最適になっています。
    しかし、明らかにそれとは違う。

    なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

    今まで数々の名手による演奏を聴いてきましたが、長い間この「なぞの響き方」の正体を突き止められないでいました。楽器の演奏はもちろん抜群に上手いけれど、それだけでなく、先にも述べたとおり、大きい音ではないけれど、会場をいっぱいに響かせる音。

    最近になり、その答えは「共鳴」であろうと推測するに至りました。

    共鳴とは「振動数の等しい発音体を並べておいて、一方を鳴らすと、他の一方も音を発する現象。」と定義されているとおり、例えば蓋をあけてサスティンペダルを踏んだ状態のピアノに向かってある音を発するとその音とその音の倍音列が響くことです。

    先に上げた名演奏では、奏者と会場が「共鳴」し合っていると想像できます。

    では、どうやって?

    チューニングにお馴染みの「音叉(おんさ)」。今ではチューニングといえば、チューナーになってしまいましたが、「共鳴」を知るにはこの音叉を知る必要があるでしょう。

    この音叉、ちょっとした硬いものでコツンと叩いて音を出しますが、単体ではほとんど音が鳴りません。

    叩いて音叉を振動させた状態で、箱や机につけるとそれが振動して音叉の音を響かせます。音叉の振動が設置面から物に伝わって「共鳴」するのです。この箱や机を会場と仮定します。

    奏者を音叉だと仮定すると、奏者が接するステージから振動が伝わり、その振動が壁や天井をも振るわせ、会場全体を響かせる、この無指向な響きの説明がつきます。

    しかし、このためには、奏者も音叉のように振るえなければ振動を伝えることが出来ません。
    チェロやコントラバスなど、はじめから地面と接している楽器はどうか?と考えてみても、無響よりも
    「響く体」が演奏するほうが豊かに「共鳴」するのではないでしょうか。

    人が同じ振動数を獲得するのに重要なのは「声」であると考えます。
    試しに、演奏している音と同じ音を歌いながらと、違う音を歌いながら演奏してみるとよいでしょう。
    (ちなみに、吹きながら「うっ」と声が出てしまうのは「歌」ではないので、ここでは音程をつけて歌えるものを「歌」としています。)

    フルートで試すと、息の量や方向が定まらずにちゃんと音を出すのは難しいと思いますが、それぞれの楽器の響きと指先に感じる振動の違いを体験しましょう。
    同じ音の場合は、例え音がちゃんと出ていなくても楽器の振動を感じられます。違う音を歌う場合は、楽器の反応がありません。しかし、指を歌の音程に合わせると、楽器が振動します。

    これは、音量の大小によらず起こる現象なのでやはり不思議です。また、「よい声」を意識するとさらに響くようになります。

    そして、歌は歌わずその音程を歌える息と、その音程意外の息で演奏を試せばそれぞれに違う響きを感じられると思います。

    以上のことから、名手は先ず自分が「共鳴」するための体をつくるために、声は出さなくとも歌えば演奏と共にその曲を「よい声」で歌える体の状態にし楽器を演奏、体を振動させて、その振動を足元から壁、天井と伝わり、会場全体を響かせているのではないでしょうか。

    これには、フレーズ、曲によって「歌」の音程を変化させ、常に楽器と「共鳴」させる体の状態を維持しないといけないので、ソルフェージュ力と集中力の維持が必要で、そのための訓練が必須でしょう。
    それが出来るから名手たるゆえんですね。

    このような壮大な想像の話、音叉がそうであるように物理的に人間がステージを振動させるほどの「共鳴」を起こすことは不可能かもしれませんが、あながち的外れではないと思います。
    「共鳴」を意識すれば確実に体の一部は歌手のように響くはずです。(音域によっては、声と音が合致しない場合、そのオクターブ、倍音を意識することが大切です。)

    楽器と体には密接な「共鳴」の関係が成立するので、ステージと体に関しては「奏した楽器の振動が指先から体へ、その振動が床に伝わり、会場全体を共鳴させている大きな音叉のイメージ」で、楽器だけが楽器ではなく、体もまた楽器の一部として演奏することによって「天井から降ってくるような」より豊かな響きを目指せるでしょう。

    最終的には「歌は心で歌う」という一言に集約されるのです。


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